自分との戦いに勝つ、成長し続ける柳本選手の精神力

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今回は、愛知工業大の女子モーグル選手柳本理乃さん（以下柳本選手）のインタビュー第2弾です。前回は、モーグルを始めたきっかけから学生生活、今後の展望についてお話いただきました。
この記事では、フィンランド・スウェーデン・フランスでのワールドカップ遠征を通して感じたご自身の成長ポイントや、印象に残った出来事、こだわりの持ち物について伺いました。

自分との戦いに勝つ精神力、トラウマを乗り越えた柳本選手の成長ポイント

―今回の遠征で感じたご自身の成長ポイントについて、お聞かせください。

柳本：今回の遠征で成長を最も感じたのは、フランス戦で無事滑りきることができた点です。去年は、同じ会場で脳震とうを起こし、最後まで試合に臨むことができませんでした。脳震とうの影響から、エア（ジャンプ）や身体の調子が上がらず、果たして最後までワールドカップで滑りきることができるのか、不安でいっぱいでした。そしてなにより、フランスの会場で滑ることが怖かったんです。

しかし、去年より成長していると信じ込み、まずは自分のやるべきことをやろうと練習に励んでいました。さらに、コーチの「慌てたり、 うまくいかなくて焦ったりする時もあると思うけれど、あなたがいるところはトップレベル。だから、しっかり落ち着いて滑ろう」という言葉に、背中を押されました。

結果、恐怖心に打ち勝ち、試合でも無事に滑りきることができました。これにより、ファイナル2に進むことができたので、去年のリベンジは果たせたと思います。

自分との戦いに勝つ精神力が、今回の成長ポイントです。

飛行機に乗れなかった！？柳本選手に伺った遠征中のハプニングや思い出

―遠征中で印象に残った出来事はありましたか。

柳本：フィンランドへ行く途中、トランジットのイスタンブールの空港で飛行機を乗り損ねるという出来事がありました。
運航情報が書かれたボードを確認しておらず、搭乗口の変更に気づけなかったんです。日本の空港のように呼び出しアナウンスもないので、気づいた時にはもう遅く、乗る予定の飛行機は離陸していました。チケット情報を過信しすぎず、最新の運航情報は自分の目で確かめないといけないですね。結果丸一日以上、空港で足止めとなってしまいました。

トラブルの一方で、嬉しい出来事もありました。フィンランドで、生まれて初めてオーロラを見たことです。とても綺麗で、遠征中の感動した出来事のひとつになりました。

―フィンランドでは、練習も行ったとのことですが、日本での練習との違いは感じましたか。

柳本：限られた時間でどれだけ集中できるかという点が、日本で自主練する時と違いました。
フィンランドでの練習は、様々な国や地域から多くの選手が同じ場所に集まるので、一人あたりの練習時間が決められていました。そのため、今回の練習では、ここぞという瞬間に力を発揮する感覚が磨かれたと思います。より本番に近い練習ができました。

―スウェーデンやフランスの遠征は、いかがでしたか。

柳本：まずスウェーデンは、とにかく寒かったです。滑っている間は集中しているため、あまり寒さは感じませんが、滑る前後はチームメイトとともに震えていました。

また、空港から会場までが遠く、移動だけで約6時間かかったので、チームメイトと話したり、曲を流してみんなで歌ったり、Wi-Fiをつなげてスマホで電子書籍を読んで過ごしていました。みんな仲良しなので、遠足みたいでしたね。

フランスは、アルプス山脈の雪景色が綺麗でした。練習がお昼頃に終わることが多かったので、日本とは違った景色を楽しみつつ、時々チームメイトと買い物へ行ったり、美味しいケーキを食べたりしていました。オン・オフの切り替えがうまくできた良い遠征になったと思います。

ロストバゲージ対策を！海外遠征の多い柳本選手直伝の準備すべき持ち物とは

―今回の遠征で、フィンランド・スウェーデン・フランスの３カ国を渡った柳本選手ですが、おすすめの持ち物はございますか。

柳本：まず、防寒グッズや上着は手荷物に入れておくことを、おすすめします。私はフィンランド到着時、薄着だったので、飛行機から降りた瞬間、寒くて後悔しました。コンパクトに収納できるダウンジャケットを、1個バッグに忍ばせておくと安心です。

また、Wi-Fiは様々な場面で活躍するので、持っていきました。近くのスーパーやケーキ屋さんを探す際、土地勘のない海外ではスマートフォンの地図アプリが役に立ちます。こういったアプリは通信環境が無いと使えないので、持ち歩けるモバイルWi-Fiルーターは便利でした。特に今回持っていった「WiFiBOX」はモバイルバッテリーの機能も兼ね備えていたので、地図アプリによって充電の減りが早くなっても安心でした。

他にも、大学4年生になり、卒業論文について教授へ連絡する時や論文のテーマ「 モーグル」の動画を観る時にも、Wi-Fiは大活躍でした。

さらに試合では、予選結果が会場モニターに表示されないため、リアルタイムで更新される専用サイトで、自分のスコアを確認する必要があります。その点数を見て、次はどう動くか考えるので、スコアの分析にも通信環境は欠かせません。

モーグル選手としても、数々の海外遠征経験者としても、海外へ渡航される際はWi-Fiを持っていくことをおすすめします。

―飛行機での移動時間も長かったかと思いますが、どのように過ごされていましたか。

柳本：主にスマートフォンにダウンロードした電子書籍を読んでいました。 機内で快適に過ごせるグッズなども持っていきたかったのですが、ロストバゲージ（空港で預けたスーツケースなどの荷物を紛失されてしまうこと）が怖かったので、機内に持ち込んだバッグには、スマートフォンやパソコンといった電子機器と、ブーツやスキーウェア、ヘルメットなど、モーグル選手として替えがきかないスキー用具を入れていました。

今回の遠征で、チームメイトのうち8人ほどロストバゲージに遭い、試合当日までスキー用具が届くかわからない状況に陥っていました。こういった道具は、自分に合ったものであるか否かで、結果に大きく影響します。

ぜひ皆さんもスキー用具をそれぞれの替えがきかないものに置き換えていただき、ロストバゲージに備えて、大切なものはできるだけ手荷物で持ち運ぶようにしましょう。

―ロストバゲージに遭うことを想定して準備をすることが、大切ですね。では、今回の長期海外遠征にて、どういったものをスーツケースに入れていたのでしょうか。

柳本：着替えと洗剤は、セットで持っていきました。
海外に長期滞在する場合、洗濯は自分で行う方も多いかと思います。洗剤は現地で買うこともできますが、海外のものだと使用方法や容量がわかりづらいので、使い慣れているものを用意しておくと安心です。

また、フィンランドではほとんど自炊だったので、カレールーやフリーズドライの味噌汁など、パッと作れて、持っていく際に軽くてかさばらないものは、重宝しました。その他にも、部屋での時間を有効活用するために、ストレッチ用具やマッサージ用具を持っていきました。チームメンバーと同じ部屋で過ごすことも多かったので、一緒にストレッチやトレーニングをしていました。

―チームメンバーの方から教わったおすすめの持ち物はありますか。

柳本：クイックルワイパーですね。海外の部屋は基本土足なので、汚れが気になってしまうことがあります。「これさえあれば、さっとお掃除ができるよ」とおすすめしてもらってから、海外遠征の持ち物にクイックルワイパーを入れています。

チームメンバーの持ち物といえば、ぬいぐるみ持ってきている子が多かったです。私もぬいぐるみの代わりに、大好きなキーホルダーをバッグにつけていて、チームメンバーからは「つけすぎ！」と言われるほどです。特に、去年のワールドカップ前に母からもらったキーホルダーは大切で、おまもりとしてどの遠征でも必ず持っていっています。

柳本： 2022年内のワールドカップが終了し、自分自身に勝つという成長を感じられたシーズン初めとなりました。
1月下旬には、カナダ戦・アメリカ戦・イタリア戦と試合が続きます。過去に脳震とうを起こしたフランス会場で自分らしい滑りができたので、次の試合でも殻を破り成長した大きいエアと攻める滑りを見せたいと思います。

―柳本選手、ありがとうございました。

柳本理乃（やなぎもと・りの）

2000年12月13日生まれ。愛知県出身。愛知工業大学所属。競技種目はフリースタイルスキーモーグル。2021年12月12日にスウェーデンで開催されたワールドカップ（デュアルモーグル）で2位入賞。

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